4月に植えられた苗は最初に発芽した数本の芽を1か月ほどの間に1本に絞られます。
その芽は葉を左右交互に着けながらどんどん成長していきます。これがブドウの「新梢」です。
ブドウはつる性の植物で、自分では自立した樹形をつくれません。それで、垂直に立てた支柱にそってテープや紐で固定してやります。これを新梢の「誘引」と言います。
苗の状態が良い場合には、1年目であっても3枚目・4枚目の葉の反対側に花房をつけることがあります。しかしそのままにしておくと、新梢の成長が弱くなるので、切り落としてしまいます。
新梢が垣根ワイヤーの最上段を越すまで伸長すると(新梢長は1.4mほど)、それ以上成長しないよう切り揃えられます。これが「摘芯」です。新梢が一人前の成長を遂げたことを表します。
いっぽう、6月冒頭、圃場の畝間にライ麦とフェアリーベッチの種が撒かれました。雑草を抑え、地面を有用な草で覆う草生栽培のためです。
こうして圃場全体が緑に覆われ、ブドウ樹が2mの高さで列に沿って立ち並ぶ、一人前のブドウ農場の姿が現れました。
西に南アルプ連峰がパノラマのように広がり、南に富士山の秀峰を望み、北に八ヶ岳連峰が聳える明野ヴィンヤードの美しい全容が姿を現しました。
来年の成長と結実に向けて新梢の登熟が始まりました。
盛夏が過ぎ、新梢の成長が止まりだすと、枝が硬くなり、その色が緑から褐色に変化していきます。これを新梢の「登熟」と言います。草の性質を持っていた新梢が木化し、冬を越す力を蓄えるとともに、葉の付け根(腋)にある冬芽が成熟して来春に萌芽し、成熟した花房─果実をつける準備を整え出した証なのです。